淡い白

 

 昨日の朝まで北海道にいた。

 

 高校の同級生から初めて結婚する人が出て,その結婚式。大義は果たされ,専ら人に会う。少し時期が早くてまだ雪はなかったものの,滞在中は目まぐるしく変わる天気。灰色の札幌,ぼやける思い出,輪郭のない夢に似た記憶だけがたくさん残った。

 

 どこか見えるところに残したくはなかったが,もうそろそろ限界がきたので一応書き置いてみようと思う。僕がいかに恵まれた人生を送っていて,そしていかに我の強い人間であるか,そして未だロマンチストで居ることの,ひとつの証左として。

 

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 「人生は一度きりである」という言葉は,選べない択一の出現に際し,使われる。しかし,確実に選べるような場面に出くわしても,その言葉はまだ生き続ける。一度きりであるが故に,主観的に非の打ち所がなく客観的に無謀な賭けにでて,そして,人生が一度きりになる。

 

 そうではない方向で解決しなくてはならない。巧く解消する手立てもないけれど,もう時機は既に二度目の訪問にかかり,あとがなく,切羽詰まる。

 

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 僕はまだよく覚えているが,いつものことながら,僕よりも二人称で表される人のほうが更に圧倒的に覚えているのだろう。それは乳白色の世界で,外は明るい緑で,自転車で,なんてことのないファミリーレストラン。

 

(巧く美化しようとしてもそれが敵わないように,僕はそれ以上,なにも書けないでいる。寝ても覚めても,したくもないシリアスが勝手に生まれて困っている。)

 

 

 手紙でも書くか。